バレエの発表会や舞台で聞いたことのある『コッペリア』の主人公は、村に住むスワニルダという明るい女の子と恋人のフランツです。
そしてコッペリアはからくり人形。バレエでのコミカルな動きも楽しみの一つですね。
幕ごとのあらすじや登場人物についてご紹介します。
『コッペリア』(バレエ)の主な登場人物
スワニルダ…村に住む明るい娘でフランツの恋人
フランツ…村に住む青年。スワニルダと恋人ですがコッペリアのことを人形と知らずに気になってしまう。
コッペリウス…人形作りの職人。気難しく変わり者で村人とは距離をおいている。
コッペリア…コッペリウスが作ったからくり人形
スワニルダの友人たち
『コッペリア』バレエの幕ごとのあらすじ
舞台となるのはポーランドの農村です。
全三幕からなるあらすじを幕ごとにご紹介します。
第一幕
人形作りの職人コッペリウスが住む家の二階には、座って本を読むコッペリアの姿が見えます。
コッペリウスはとても気難しいため、村人からは変わり者扱いをされています。
とても可愛いコッペリアの様子は、まるで本当の人間のよう。誰もコッペリアがからくり人形であることに気が付いていません。
そして同じ村に住む明るくて人気者の娘スワニルダは、青年フランツと恋人の関係にありました。
ところがフランツは、コッペリウスの家の二階にいるコッペリアに心を奪われてしまいます。
スワニルダは自分のことを見てくれずコッペリアに気持ちが向いているフランツにやきもちを焼いていました。
ある時、外に出かけたコッペリウスが家の鍵を落としてしまいます。
その鍵に気が付いたスワニルダは、友人たちと一緒にこっそり家に行ってみることにしました。
第二幕
コッペリウスの家に入ってみたスワニルダたちは、そこで初めて、コッペリアがからくり人形であったことを知りました。
とそこに気難しいコッペリウスが家に帰ってきてしまいました。
慌てて逃げるスワニルダたち。
運よくスワニルダは見つからずに隠れていましたが、間の悪いことに何も知らないフランツがコッペリアに会いたいばかりに窓から家に侵入してきて、コッペリウスに見つかってしまいました。
激しく怒るコッペリウスは、フランツに眠り薬を飲ませて自信作の人形コッペリアに命を吹き込もうとします。
この様子を見ていたスワニルダは、命の宿ったコッペリアに成りすましてコッペリウスを翻弄しいたずらの限りを尽くしました。
そしてこの騒ぎで眠りから覚めたフランツも、コッペリアが人形だったことを知りスワニルダと逃げ出し、二人は仲直りしました。
第三幕
場面は村の祭りの日。
仲直りしたフランツとスワニルダは、めでたく結婚することとなり祝宴が始まります。
そこに人形を壊されたコッペリウスが怒って乱入してきますが、二人が謝って村長さんも仲介してくれたことからコッペリウスも機嫌を直して最後にはみんなで一緒にお祝いをするのでした。
『コッペリア』(バレエ)の特徴と見どころ
主役のスワニルダは明るくて誰からも好かれる陽気な女の子。ただ可愛いだけでなくおてんば娘のような動きが観ている人を楽しませてくれます。
恋人フランツがコッペリアに夢中になっているときにはやきもちを焼いたり、こっそり家に侵入する様子や、コッペリウスの前でコッペリアのふりをしているときのコミカルな動きなど。
笑ったり怒ったり時には勇気を出して恋人を救ったりと、観終わった時にはみんなスワニルダのファンになってしまいそうですね。
バレエ『コッペリア』の初演と舞台背景
コッペリアの初演は1870年5月25日にパリ・オペラ座で行われました。
主役のスワニルダ役には当時16歳のジュゼッピーナ・ボツァッキ(Giuseppina Bozzacchi)というイタリアのバレエダンサーです。
そして青年フランツ役にはウジェニー・フィオクル(Eugénie Fiocre)というフランスの女性のバレエダンサーが男装をして務めました。
とても美しい美貌を持っているということで有名だったのだそうです。
また、舞台のポーランドの農村は当時のオーストリア領であったガリツィア地方という設定です。
公演などで『コッペリア』を鑑賞するのなら、舞台背景や出演者たちの衣装などにも民族の特性が表現されているところを楽しめます。
コッペリアの原作はE.T.A.ホフマン著「砂男」
E.T.A.ホフマン(エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン)は1776年生まれのドイツの作家です。
短編小説「砂男」の中にも不気味な老人コッペリウスが登場し、とある青年が恋心を抱いた相手が実は人形であったという内容です。
原作ではもっと内容がおどろおどろしい感じで、青年も最後には理性をなくしてしまい塔から落ちてしまうなどちょっとホラーな要素が入っていますが、初演で台本を手がけたサン・レオンとシャルル・ニュイッテルによって、陽気で明るい喜劇のバレエ『コッペリア』が誕生しました。
バレエ『コッペリア』の他にオペラ『ホフマン物語』もこの「砂男」が題材となりました。
コッペリア(Coppélia)
原題:『コッペリア、あるいは琺瑯質(エナメル)の目をもつ乙女』(Coppélia, ou la Fille aux yeux d’émail)
コッペリア(バレエ)のあらすじ・登場人物・見どころ のまとめ
パリ・オペラ座のパトリス・バール演出の公演では、スパランザニという男性の登場人物が増えているバージョンもあります。
スパランザニは原作「砂男」で老学者スパランツァーニとして登場しており、人形作りの職人コッペリウスと共謀して魔術を使って人形に命を与える手助けをする人物です。
原作からの同じ部分は「人形に恋する青年」というところだけで、それ以外では演出家によって色々な視点でのバレエ『コッペリア』が生まれています。
青年フランツとコッペリウスの二人の男性からなる三角関係になっていたり、逆に人形に恋してしまう間抜けな青年フランツとして描かれていたり。
ぜひ、陽気で明るいスワニルダの表現を楽しんでくださいね。
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